口腔がん検診の有用性

2021/9/29

~病診連携で治療した舌癌症例~

 

口腔がんはほかのがんに比べて発見しやすく、早期発見であれば5年生存率は90%以上、完治が十分可能である。一般的に口腔がんになるまでには5~6年かかること言われており、がん全体からみれば 約1~3%と低い数値ではあるが、日本では毎年約3,000人が口腔がんで命を落としている。

 

(口腔がん検診での検査方法)
一般歯科診療所で行うことができる口腔がん検診での検査は、視診・触診、病理検査、画像診断の3つである。

 

 

視診・触診

口腔がんは、目で見て触れることができる部分に発症するため、視診で粘膜が白くなったり赤くなったりしているところや潰瘍がないかを確認、また触診では、指で粘膜に触れて硬結が触れるところがないか、隆起しているところはないかを確認する。口腔がんの場合、首のリンパ節への転移の可能性があるため、頸部の触診も行う必要がある。

 

 

 

蛍光観察装置による視診で病変組織を発見

特殊な光を粘膜に照射することによって、口腔内粘膜異常の早期発見や、疑わしい粘膜疾患の鑑別に有用である。

 

 

 

病理検査

1.細胞診

視診・触診を行った結果、病変が疑われる部位の表面組織を歯間ブラシでこすり取り、顕微鏡でがん細胞の有無、がん細胞の種類、悪性度などの判定を行う検査である。患者さんは痛みを伴わないため、簡易にできる検査である。

 

<細胞診の分類(Papanicolaou分類)>

  • Class I   異型または異常な細胞を求めない
  • Class II   異型または異常細胞を認めるが、悪性の疑いがない
  • Class III  悪性の疑いのある異常細胞を認めるが、悪性といいきれない
  • Class IV  悪性細胞と判断しうるが、悪性の特徴に乏しく少数である
  • Class V   明らかな悪性細胞を多数認める

 

2.組織診(生検)

細胞診で悪性が否定できなかった場合やより確実な診断を得るために、麻酔をして異常がみられる 部位を小さく切除(正常組織を含めて)して、病理検査を行う(生検)検査である。

 

 

画像診断

状況に応じて、パノラマ、デンタルX線写真、CTを撮影する。

 

 

「口腔がん検診が有用であった舌癌の1例~病診連携による治療経験~」

患者:66歳 女性
初診:2020年9月
現病歴:約8年前に左側舌縁に口内炎を自覚、かかりつけ歯科にて歯の鋭縁部の削合をするが完治せず、経過観察となっていた。その後近病院歯科を受診し、細胞診を2回施行されるも異常がないとのことで、経過観察となっていた。1週間前より同部の疼痛が出現したため、口腔がん検診目的に当院を受診された。
現症:左側舌縁部に約3㎜の潰瘍を認め、周囲に白斑を認めた。出血や硬結は認めなかった。
検査および治療経過:初診時に潰瘍に接触する歯の研磨、また細胞診施行し、classⅢaの診断結果であった。組織生検について説明したが、同意が得られず舌縁に歯への接触を軽減させる目的で下顎にソフトタイプのマウスピースを作製した。その後経過観察するも、病変は消失せず、再度生検の必要性を説明し、初診から約2ヶ月後に生検を施行した。病理組織学的検査の結果、舌癌の診断を得たため某大学病院歯科口腔外科へ紹介し、全身検索等の検査を施行、生検施行から1ヶ月後に左側舌癌切除術が施行された。術後12日後に退院となり、現在まで再発などの所見はなく経過良好である。
考察:細胞診は検査としては簡易であるが、確定診断には至らないことが多い。一方、組織生検は粘膜に侵襲を加えるが、確定診断を得ることができる。今回、口腔がん検診で受診された患者に細胞診、生検を行い、舌癌の診断を得ることができ、早期に病診連携で対応できた症例を経験することができた。

 

 

初診時

(蛍光観察装置による撮影) 潰瘍相当部に不均一な蛍光ロスを認める 蛍光ロスは白斑の前方部まで広がっている

(術中)

(術直後)

(術後15日) 

(術後4ヶ月)

 

『口腔がん検診実践に向けて』

 

• 視診や触診だけでがんと診断することは不可能(がんの専門医でも不可能)

• 正常組織ではないことに気付くことが重要!
• 口腔内診査・リコール時は、歯や歯周組織だけではなく、舌や頬粘膜のチェックもしましょう。
• 2週間改善なければもしくは怪しいと思ったら細胞診、もしくは口腔外科へ紹介、できるなら生検
も行いましょう!

レーザーなどで経過観察することは絶対に避けてください!!

 

 

「細胞診と生診の保険点数・検査料金」

細胞診

細胞診     190点

口腔病理判断料 150点

生検

組織返済酒   400点

標本作成料   860点

口腔病理判断料 150点

 

 

トップに戻る